下津井田之浦「弘泉寺」が登録文化財となる | 建築随想「仙芳丸航海日誌」
ヤマグチ建築デザイン
下津井田之浦「弘泉寺」が登録文化財となる

郷里の下津井田之浦のお寺「弘泉寺」が国の登録文化財となります。先日の文化庁の審議会で答申されたとの連絡を、倉敷市の担当課から受けました。手続き自体は専門家にとっては、それほど難しい事ではないのですが、その専門家が少ないという実情があり、今まで見過ごされて来たところ、持ち主の住職が強く願ったために私のところに依頼が届き、今回の登録へと相成りました。

 

 

言うまでもなく、お寺や神社というのは、人々の日々の生活に密接に関わりのある公的な施設で、古くから地元の人に親しまれて来ました。私自身も小学校に入学前の数年間、こちらのお寺が運営している保育園で幼少期を過ごすなど、いわゆる「地元の場所」として、記憶していたお寺でしたが、大人になり、建築の専門教育を受けるに連れ、この寺の建物の素晴らしさに気づき、何度となく通っては、観察したり、写真を撮ったりしていました。

 

 

「住んではいるけど、暮らしていない」という概念とその意味するところの重大さを、「まちづくり系」の学界では、共有しているところですが、エリアの魅力や価値を作るのは、そのエリアに住んでいる人だ!という当事者意識を自分たちが持つのか、どうか、という点が、今後の街の行く末を左右していると、私は考えています。

 

どこもかしこも、「過疎化」の一途を辿る地方都市ですが、このお寺のある下津井も然りで、下津井どころではなく児島もそうでして、人口は減る一方の地方都市の典型な印象を発揮しているところです。そういった中で、このお寺が登録されるというのは、地域に住んでいる人たちの、自尊心や生きている喜び、みたいなものに寄与する一つの話題として、認識されることでしょう。

 

朝に家を出て、夜に家に帰る。休日はどこかに遊びに行くか、家でゴロンとする。決して、自分のためではなく、人のために時間を捧げる、というのが、今のサラリーマンの典型生活ですが、そういった生活のルーチンワークに、地元の生きたい店、会いたい友達、楽しい場所、というのを持つことが、言い換えれば、自分たちの日々の生活を心地よくするという仕組みが、この当たり前の仕組みが、いま現在、新たに見直されています。

 

児島は住む人が少ないから、家を作ろう。というのは、かつての高度成長期の感覚であって、住む人が少ないのは、魅力がないからだ、楽しくないからだ、だから、「暮らしを楽しめる街にしよう!」という感覚を共有することが、地域を楽しく、魅力ある場所にする近道です。

 

 

ヤマグチ建築デザインでは、本業の建築デザインの他に、空き家を使える家にしたり、バナキュラーな美術館活動を行なっていますが、それらは、今回の登録文化財の業務と同様に、利益などは度外視した、地域を楽しくする活動の一環ですし、将来、例えば、60歳になった時に、自分自身が楽しい日々を暮らせるように、そんな風に、なればいいなあ、と思いながら、本業以外の働きとして、時間を費やしている分野です。自分の街は自分でつくる。欲しい暮らしは自分でつくる。という感覚です。

| 22:26 | comments(0) | - |

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