鴨方の家 | 建築随想「仙芳丸航海日誌」
ヤマグチ建築デザイン
鴨方の家
「これは楽園になりますよ。」
写真を見せられてすぐに、返信した。児島の先輩からの引越し相談への返信だった。
あの場所に行って、完成後を想像すると、きっとそう思う。そんな敷地だった。単なる相談かと思っていたら、のちには、仕事として依頼したいと言ってくださり、驚きつつも依頼に感謝しつつ、事に当たった。今年の夏はそんな日々で、今回完成に至った。
広い、とにかく広い。学生なら雑魚寝で30人くらい収容できそうな住まいだし、実際、「田舎で稲刈り体験」などと同様の感覚で、大阪から人を集めて、数万円を払ってくれて、農作業をしてくれそうな、そんな風景が周りには広がっている。しかも、敷地内の竹やぶや雑木をこのクライアントが撤去してしまったので、本当に「楽園」となり、近隣住民の方は、引っ越してきたこの家族の本気度にびっくりし、歓迎したと思う。実際、多くの村人が「新しい村人」の家に訪ねてきている。

土間の家である。しかも、今までで最大の土間の家となった。通常の「田の字型」民家の構成では、玄関からまっすぐに土間が続くが、今回は、土間での食卓スペースを確保するため、板の間にするような場所までも、土間にして、写真のように食卓を置かせてもらっている。
昔の人から受け継ぐ民家のセオリーがすべて詰まった住宅で、真夏でもクーラーがいらない涼しさを提供してくれていた。丘の上という立地も効いている。冬は薪ストーブを焚くことで、家全体を暖めるが、おきまりの「土間の効用」によって、熱を蓄熱してくれるので、問題ない。気になるのは、二棟をつなげているため、広すぎるくらいか。



住宅というのは、高度ではない技術を積み重ねることによって、その重複によって、自然の厳しさの中で耐えていくような作りになっている。車のボディのように、一枚だけで耐えています、という状況ではない。だから、天井を撤去したり、雨戸を外したりすると、隙間風が気になったり、台風の時には、木の建具から雨漏りをしてしまうという状況を作り出してしまう。
安藤忠雄先生の「住吉の長屋」が完成した当時には、設計者よりもそこに住む人を賞賛したい、という弁があちこちで聞かれたそうだが、あれは、不自然なコンクリート住宅だから、そういう発想になるのであって、科学とか工業・産業などの言葉すらなかった時代から、人々のためにあるものが「住まい」であって、無名の日本人が室町時代から営々と続けてきた「実地テスト」に合格して残ったものが、「古民家」なのだから、家に住むことを、「賞賛したい」とか、住む人の方が偉い、とか、そんな文句が飛び交う言語空間の方が、私に言わせれば気持ち悪く、おかしい感覚のように感じる。実際、ここに住む家族は普通に暮らしているし、自分が偉いとかそんなことはちっとも思っていない。冬になれば、暖かい二階で寝て、夏になれば、涼しい一階で寝る。それだけのことだ。

鴨方の家、完成しました。

| 03:35 | comments(0) | - |

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