倉敷建築工房 山口晋作設計室
世界平和を望む
かつての私の文章(「世界平和か、家庭平和か」2008年12月)に電力会社が「電気料金値上げ」という形で、予想通りの回答を寄せてくれたようなので、今回は、家庭で使う燃料の話をしたいと思う。

今年度、2015年度を境にして、住宅の燃料に対する大衆意識が変化を迎える。オール電化住宅は、1990年から本格化したものだったから、実に四半世紀・25年間がその全盛期として、のちには記録されることとなりました。
電力会社各社は、今年度を境に、随時、深夜電力の割引率や時間帯割引の契約形態を見直していくのだそうで、経済性だけを見る場合には、オール電化が一番良い、という選択は無くなり、さらには、IHコンロが発する電磁波の身体への影響懸念の高まりなども受けて、調理時の加熱機器を、IHコンロではなくガスコンロにするという選択肢が増えていくという事態となりました。
今回の電気料金の値上げは、消費者の抱え込みの後には小売価格を値上がりさせるという、よくある常套手段なのですが、世界平和を望むなら、ガスが良いだろうというかつての言葉通り、最近のお客さまにはガスコンロを強く進めている私です。すでにIHコンロを自宅に設置している私は、ある程度の時期をめどにして、ガスコンロに変えるつもりですが、過去に設置したお宅に対しても同じようにお勧めしていきます。

原油からできるLPガスでさえ、この状況ですから、ガス種別が天然ガスに切り替わり始めている最近の状況を背景にすると、もうこれからは、ガスによる調理やガスによる給湯を押していくのが、心ある設計者の姿のように感じています。つまりは、(価格調整のために)掘り惜しみができる「原油」(LPガス)と、穴を開けたらプシュ〜!と吹き出し続ける「天然ガス」では、原油精製作業が要らず且つパイプラインによる供給だけで済む天然ガスの方が、自然な姿であり、今後は主流となるだろうと感じているのです。国際情勢に目を向けてみれば、現在日露で検討中のロシア経由でのパイプライン天然ガスが開通でもしたならば、北海道が東京になるくらいのインパクトを持っており、日本も中国のようにロシアともっとお友達になればいいのになどと思いつつ、パイプライン化については目下注目しているところです。20世紀は石油の時代とも言われましたが、個人の日々の暮らしに直結する調理器具のレベルでも、その石油の時代が終焉を迎えつつあるということになります。

本来住宅というものは、日々の生活の器ですから、家事労働のために使う設備機器も、過度に複雑なものではなく、壊れたら直せるものが望ましく、ましてや、行政の補助金などの助けを受けずに自立して導入できるものが望ましいです。また、廃棄の際にあまりお金がかからないのも大事でしょう。工業や産業という名前が作られる以前から、人の住まいはあったわけですから、科学技術の進展によって劇的に変わってきた20世紀の住生活というものが一時的なものだという感覚を持ちつつ、淡々とした生活の繰り返しに耐えうる「道具性」が、住宅設備には必要でしょうし、そこには、過度に消費を活気するコマーシャリズムのようなスパイスは不要だろうと考えています。

住宅は、自動車のように全てが工場で精密に作られるものではなく、生活の場である個別固有の場所で作られるもので、気象条件や材料条件に影響された地方色を持ちながら、ゆるい技術が幾重にも重なりつつそれらが支え合って自立するものです。と同時に、眠る、食べる、寛ぐ、遊ぶという、とても精神的な活動が展開される場所が住まいですから、これらを「科学技術」で、「良いもの」にしていこう、「良いもの」にできるのだ、といった「信頼」や「信仰」みたいな前提をもつのは、ハナから間違っていたのです。今だに住宅産業発のコマーシャルでは、「科学技術」による「良い住まい」が描かれていますが、産業革命以来の人工的な病いである「科学信仰」が、通用しないのが、住まいという代物です。
| 15:50 | comments(0) | - |

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