お知らせ | 建築随想「仙芳丸航海日誌」
ヤマグチ建築デザイン
センスをみつける

クルマの外観(見た目)を見て、デザインが良い/悪い、という表現をする自動車評論家批評家がいます。たくさんいます。デザインという言葉は、日本語でいう設計です。機械設計、土木設計、建築設計など。設計という行為は、かなり広範囲な物事を、有限な時間とお金の前提条件の中、理屈で構築して具体的なモノに作り上げていくと同時に、目で見て心地良く、使ってみて心地良い環境を作り上げる総合的な作業のことですから、外観を評価する言葉として、デザインが良い/悪い、という言葉を使うのは、的外れの様に感じています。外国語を使いたいというならば、ルックス(和製英語)が悪い、もしくは、アピアランスが悪い、というのが、最適な表現だと思います。それでも、文章で勝負しているクルマ評論の業界においては、多数派を占める「言い回し」なのでしょうから、言葉というのは、取り扱いが難しいものだな、と感じます(もしくは、「デザイン(和製英語)」と理解した方が、日本においてのみ通用する用法なのだと理解した方が、良いのかもしれませんね)。

 

さて、私がかつてお世話になった楢村徹設計室において、在籍中に褒められた経験というのは、実は、一度だけでした。しかも、一枚の建具のとても小さな取手についてのコメントで、建物が完成後に初めて訪れた際に、指を指した上で、「これは、ええ」です。独立後に私の事務所から外を眺めた景色を「良い」と言われたことを加えると二度だけです。彼は、楢村さんは、褒めない教育方針を貫いていて、「褒めて伸びた人を見たことがない」といつも言っていました。

 

 

先日、岡本太郎さんの名著『今日の芸術』を読んだのですが、そこには、セザンヌやゴッホの下手な絵画やピカソのキュビズムの頃の下手な絵画(より正確には、新たな表現を際立たせるためにワザと下手に描いた絵画)を取り上げて、こう書いてありました。「今日の芸術は、うまくあってはいけない。きれいであってはいけない。ここちよくあってはならない。」さらに、ずっと後には、「よかれあしかれ、何ごとにつけても、まず飛び出し、自分の責任において、すべてを引きうける。こういう態度によってしか、社会は進みません。」と書いてありました。

楢村さんが自分の部下たちをほとんど褒めなかったのは、自分も含めてみんな下手だ、という前提とともに、私たちスタッフたちが自分自身で苦しみ悶えて、新たな提案を考えたり(自分なりの感性を発揮すること)、立ち止まって思索を重ねたりする行為(哲学すること)を、サポートするためには、「褒めない」ということが、一番の近道だ、という判断があったのだろうと、今では思います。独立後の厳しい社会的な評価の中で生き抜く胆力を養う模擬的修行的な訓練を課していたのだろうと思います。

 

4月から7月までの毎月第四土曜日の午後に、「センスをみつける建築学講座」というものを開こうと、現在準備しています。全4回です。取り扱う内容は、建築設計とその他周辺の活動についてですが、その時々の判断基準に注目して、なぜその様な判断をしたのか、という種明かし的なことをストーリーを交えて語る講座になっています。建築系の人ではなく、あえて児島の一般企業の方々に向けての講座です。

現在、様々な業界で、先に進めない状況が生まれていますが、そこを打破していくためには、人真似では無くて、個人それぞれが、自分なりの生き方を定めて、腹を決めて進んでいくしか、開ける道も開けないのだろうと思います。数字(PL・BS)や技術に重きをおくのでは無く、自分が「美しい」と感じる道に進むのです。「センス」という言葉でさえ、人によって受け取りかたが違うので、難しいのですが、ここでいうセンスとは、感性のことです。つまり、綺麗とか、上手い、というのではなく、自分なりの感性(センス)・美意識の基準を再発見することが、先行きの見えない状況を開いていくために必要なことだと思います。テクニックを磨くとか、勉強しなければならない、という方面に傾くのではなくて、自分なりの感性をオモテに出していくのが、次の展開への近道ではないだろうか、と思うのです。

| 17:05 | comments(0) | - |

仕事紹介(My Works)に、5物件を追加しました

近年の事例として5つの物件を追加しました。

http://www.yamaguchiarc.com/work

 

「鷲羽山弘泉寺」は、文化庁に対して「登録有形文化財」としての登録手続きを行いました。

「下の町の家」は、地元児島での新築住宅です。

「パントーン」は、倉敷市中島にある児童福祉施設で、美容院からの改修工事です。

「旧松島分校」は、倉敷市下津井沖にある松島の廃校小中学校校舎の改修工事です。

「岡山の都市住宅」は、岡山市北区の住宅地での新築住宅(借家併設)です。

 

当事務所は、今春に独立して満10年を迎えます。地域の皆様のお役に立てるよう、なお一層励む所存です。今年もよろしくお願い申し上げます。

| 20:31 | comments(0) | - |

生きたいように生きる

設計事務所を始めて以来、以前にも増して、なりたい自分になる。したいことをする。そんな人とたくさん会ってきました。

特に、最近は、本業がありながら、別の隙間時間で、やりたいことに打ち込んだり、仕事のスキルを活かして社会活動に勤しんでいる人に出会います。縛られない生き方、とも言えるでしょうか。日々の忙しさの中で、小さな楔を打ち込みながら、前に進んでいる様を拝見すると、美しいな、素敵だなと尊敬します。

 

僕自身も、たくさんのお仕事をいただき、幸いにもドライブや映画鑑賞を楽しむ時間もないくらいの日々を送っています。実は、建築をやってみたかったんです。という人がいたら、連絡ください。また、児島で社会活動も行なっていますので、そちらの方でも人材を求めています。限られた時間でも大丈夫です。ご自身の自由になる時間で共に働ける仲間を求めています。専門的な勉強をしていなくても大丈夫です。むしろ、要りません。

 

自分の人生は、自分で舵をとるのだ、という穏やかな決意を持った人と出会えたら素敵だと思います。ゆるい求人です。

 

 

大正期の「仙芳丸」の木製の舵です。下津井の家に眠っていました。
| 01:00 | comments(0) | - |

「仕事紹介」ページの更新

本日、「仕事紹介」ページの更新を行いました。

 

3件の事例を追加し、既存事例も写真点数を増やしました。

・鴨方の家

・農家の再生

・山下産業グループショウルーム

 

360度パノラマ室内体験」も追加しています。

まるで、室内にいるかのような疑似体験ができます。

 

また、プロフィールページも小変更を加えています。

今後ともよろしくお願いいたします。

 

| 19:37 | comments(0) | - |

鴨方の家
「これは楽園になりますよ。」
写真を見せられてすぐに、返信した。児島の先輩からの引越し相談への返信だった。
あの場所に行って、完成後を想像すると、きっとそう思う。そんな敷地だった。単なる相談かと思っていたら、のちには、仕事として依頼したいと言ってくださり、驚きつつも依頼に感謝しつつ、事に当たった。今年の夏はそんな日々で、今回完成に至った。
広い、とにかく広い。学生なら雑魚寝で30人くらい収容できそうな住まいだし、実際、「田舎で稲刈り体験」などと同様の感覚で、大阪から人を集めて、数万円を払ってくれて、農作業をしてくれそうな、そんな風景が周りには広がっている。しかも、敷地内の竹やぶや雑木をこのクライアントが撤去してしまったので、本当に「楽園」となり、近隣住民の方は、引っ越してきたこの家族の本気度にびっくりし、歓迎したと思う。実際、多くの村人が「新しい村人」の家に訪ねてきている。

土間の家である。しかも、今までで最大の土間の家となった。通常の「田の字型」民家の構成では、玄関からまっすぐに土間が続くが、今回は、土間での食卓スペースを確保するため、板の間にするような場所までも、土間にして、写真のように食卓を置かせてもらっている。
昔の人から受け継ぐ民家のセオリーがすべて詰まった住宅で、真夏でもクーラーがいらない涼しさを提供してくれていた。丘の上という立地も効いている。冬は薪ストーブを焚くことで、家全体を暖めるが、おきまりの「土間の効用」によって、熱を蓄熱してくれるので、問題ない。気になるのは、二棟をつなげているため、広すぎるくらいか。



住宅というのは、高度ではない技術を積み重ねることによって、その重複によって、自然の厳しさの中で耐えていくような作りになっている。車のボディのように、一枚だけで耐えています、という状況ではない。だから、天井を撤去したり、雨戸を外したりすると、隙間風が気になったり、台風の時には、木の建具から雨漏りをしてしまうという状況を作り出してしまう。
安藤忠雄先生の「住吉の長屋」が完成した当時には、設計者よりもそこに住む人を賞賛したい、という弁があちこちで聞かれたそうだが、あれは、不自然なコンクリート住宅だから、そういう発想になるのであって、科学とか工業・産業などの言葉すらなかった時代から、人々のためにあるものが「住まい」であって、無名の日本人が室町時代から営々と続けてきた「実地テスト」に合格して残ったものが、「古民家」なのだから、家に住むことを、「賞賛したい」とか、住む人の方が偉い、とか、そんな文句が飛び交う言語空間の方が、私に言わせれば気持ち悪く、おかしい感覚のように感じる。実際、ここに住む家族は普通に暮らしているし、自分が偉いとかそんなことはちっとも思っていない。冬になれば、暖かい二階で寝て、夏になれば、涼しい一階で寝る。それだけのことだ。

鴨方の家、完成しました。

| 03:35 | comments(0) | - |




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