建築随想「仙芳丸航海日誌」
ヤマグチ建築デザイン
岡山の都市住宅、シモーム邸(上)

地方都市の市街地に建つ住宅は、どうあるべきか、ということを考えてみました。郊外ではなく、市街地に建つ住宅です。

上の世代の方にとってみれば、東考光の「塔の家」を真っ先に思い浮かべることでしょうが、今は昔、しかも、地方都市の市街地ですので、ここは少し心のゆとりを持って臨みました。

 

(重要文化財;現存する日本最古の住宅「箱木千年家」室町時代)

 

従来、日本の住まいというのは、「箱木千年家」にあるように、高温多雨の気候に合わせて、大きな屋根で「家族が眠るところを守る」というのが、通例でした。正面から見ると、壁はあまり見えず、屋根ばかりが見える、という上の写真のような住宅です。屋根の勾配がキツくないと、草葺きの屋根は雨漏りするので、とても急な屋根が載っかっていました(ほら、あれですよ、アニメ「日本むかし話」の、アノ屋根ですよ)。もっとも、粒度の揃った粘土を高温で焼いた瓦が発明・普及されて以降、その屋根の勾配は、幾分緩和されたものの、それでも、今の日本の風景を覆っている緩い緩い勾配の屋根ほどではなく、丘に登ると瓦が一面に連なっている姿は、それは見ていて心地よいものでした。その屋根の勾配を現在のようにサラに大きく変えたのは、第二次大戦後にスタートした「住宅産業」という業態でした。

 

一方、雨の少ない地域、例えば、イタリアのフィレンツエにある都市住宅などは、屋根といっても、日本人から見ると、ちょいとした庇があるだけで、------こちらは、ほら、「麦わら帽」ではなく、「ハンチング帽」みたいなもので------、屋根はほぼ見えず、街ゆく人からは、壁だけが見える、という印象を持ちます。

 

(アルベルティ「ルチェルライ宮」フィレンツェ、1451)

 

そういった、日本の屋根とイタリアの屋根を同時に併せ持つ、ハイブリッドな住宅を考えていくことが、岡山の都市住宅のかたちを導いていくのではないだろうか。確かに、日本の家は高温多湿で雨が多いので、雨が多い日に窓を開けていても、室内にはビタ一文!雨が入ってこない、というのが理想だろうが、それを隙間なく建て混んでいる都市住宅で実行していると、光が全く入らない、暗〜い家になるのではないだろうか。

ちょうど「雨の日でもクルマの窓を開けたい」という欲求を実現するために、様々な形状の「ドアバイザー」が世の中にあるように、「屋根の建築」であると共に「壁の建築」でもあるような住宅を目指そう、そこから、都市住宅の屋根を考えてみよう、と取り組んだのが「シモーム邸」です。

 

もっとも当然ながら、戦後の「住宅産業」の人たちが行き着いた、限りなく緩い勾配の屋根(面積が少なくなるので、材料代が安くて済む)のように、住む人のことを思わずに、自分たちにとってどのように作れば効率が良くて利益が上がるだろうか、ということを最優先事項として掲げていたのではなくて、狭くて地価の高い中心市街地の中にあって、人として健全な生活を日々送るためには、やっぱ、居間に光は要りますよねー、ということがポイントでした。そう考えていくことが、家族にとって居心地の良い、都市の砦である都市住宅を導く杖なのではないだろうか、と。

 

 

(「シモーム邸模型」古民家再生工房30周年記念、2017年)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(下)に続きます。

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